「・・・・・・・・・・・」
現場の色無白亜です。
カメラさんこっち向いてますかー?
ええと、今私は侑魔君のお家に来ています。
先日あのドシリアスな空気漂う中で『ぼくの話をしよう』的な流れになって、でもあの場で話すのもなんだったからってことで後日改めて・・・って事になったんだけど・・・。
普通に男の子の家とか来た事ないんですが。
お兄ちゃんにも普通に『行ってらっしゃいー』とか言いながら送り出されたし。
いや侑魔君に限ってそれはないと思うけど、もう少し心配とかさあ!!
とかそれ言ったら言ったで『大丈夫だって。侑魔だし』とか相当失礼な事言ってたけど・・・アレは侑魔君にチクッても良いのかなーと。
(き、緊張する・・・っ!!!)
右手と右足が同時に出る程度には、緊張しているらしい。
先刻から気付いて何度か治してるんだけど、やっぱり気がつけば一緒に出ている辺り、相当緊張しているのがわかる。
「・・・いや、そんなガッチガチに緊張されても、困るんだが・・・」
「!!き、緊張なんか、してないしてない!!あは、あはははっ」
「・・・・・・・・・まあ、いいけどさ」
何か諦められた気がします。
一瞬何か言いたげな表情になった侑魔君は、結局深く言及せずに居てくれた。
「此処が俺の部屋。・・・・・・・・・・・・・・散らかってるけど、気にするなよ。汚くても引くなよ!?」
「え?うん・・・勿ろn・・・」
念を押して言われたから普通に答えたけど・・・会話の途中で開けられた部屋の様子に、絶句した。
これは、汚いというか・・・何ていう図書館?
しかも本とテレビとベッドしかないのに凄まじい本の所為で最低限のスペースしかないという・・・。
こんなに地震が来たら怖い部屋初めてみた・・・。
何かドン・○・ホーテも此処までじゃないと思うんですけど。
(うわー・・・本だらけなんですけど)
何かありとあらゆる種類の本が転がってるけど・・・相当本が好きなんだなー・・・侑魔君。
私の方を一瞬見て、侑魔君は若干恥ずかしそうに視線を逸らした。
「・・・・・・しょうがないだろ、今片付けると、何が何処にあるか解んなくなるんだから」
「え、今はわかってるの?」
「大体の本の位置は把握してる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
何と言うか、凄い。
しかも先刻チラッと見た感じ、この家のありとあらゆる場所に本棚があって、本が溢れてる。
・・・マジで図書館か古本屋が開けるんじゃないかと思う。
「取り敢えず、そこら辺に座っててくれ。何か持ってくる」
「あ、お構いなく」
一階へ降りていく侑魔君を見送ってから、また部屋に目を向ける。
・・・取り敢えず此処は・・・ベッドの下とかチェックしとくべきなのかなー。
・・・・・・・・・・・・・・・いきますか。
思うが早いか、取り敢えずベッドの下に手を伸ばしてみる。
お、早速何かに手が当たった・・・。
引っ張って出してみるとそれは・・・・・・まあ確かに人には見せられない本だった。
五冊引っ張り出して見れば、それは『七不思議大百科』『異界とは』『貴方の知らない世界』『ほんと○あったこわい話』『怖い話体験集』など・・・。
要するにホラー系ばっか。
ってかコレ、本棚にも同じような系統のものが並んでたからただの仕舞い忘れかと思いきや・・・ベッドの下もちょっとした本置き場みたいになってる模様。
他にも本がわんさかあるし。
・・・・・・・・・・・・よくこのベッドの上で寝れるなー・・・。
夜中に此処から何か出てきそうなんですけど。
(でもまあ・・・侑魔君らしいなー・・・)
何か侑魔君がそろそろ戻ってきそうな気配がするので、取り敢えず何も言わずに本を元に戻しておいた。
・・・実を言うとホラーはちょっと好きなので、本棚にある本を眺めながら、侑魔君を待つことにした。
「お待たせ。・・・コッケ・コレーで良い?」
「あ、うん。有難う」
しっかり冷えたコレーを受け取り、一口飲む。
「・・・えーと、唐突だけど本題に入って良い?」
「う、うん・・・」
唐突に振られた話題に、私は本来の目的を思い出して、身を硬くした。
「・・・ん。・・・ええと、・・・この間お兄さん達とした話、覚えてる?」
話すと決めたからなのか、侑魔君は何処か諦めたような様子はあるものの、前回のような悲壮な雰囲気はなかった。
そこに少しだけ、ほっとする。
「うん。・・・妖怪の暴走が激しくなってるから、見回りを強化しよう、みたいな内容じゃなかったっけ?」
それでバカレンの皆が露骨に嫌な顔をしていたのは覚えてる。
それから余談だけど、翔魔君と侑魔君のロリ誘拐も。
・・・まさかあんなにノリノリで歌うとは・・・。
「ん。・・・それで、俺だけお兄さんに呼び出されただろ?」
「うん・・・」
頷いてから、侑魔君を見据える。
侑魔君は、炭酸の入ったコップを暫く見つめてから、視線を私に向けた。
「その時俺は、自分の『役割』を全うするように言われた」
一瞬だけ声に篭る、諦めたような響き。
その『役割』が侑魔君にとって好まざるべきものだという事がよく解る声の調子だ。
「・・・役割?」
恐る恐る問い返すと、侑魔君はなるべく軽く振舞おうとするように、頬を掻いた。
「・・・んー、ほら、俺達バカレンって特殊な能力があるだろ?」
「うん。皆凄い強いよね・・・。意外な事にお兄ちゃん含めて」
「後半は聞かなかった事にするとして。・・・それは、俺達が皆『鬼』だからなんだ」
鬼。
また意外な言葉が出てきたというか・・・何と言うか。
「お、鬼・・・?」
目を見開いて呟くと、侑魔君は真剣な表情のまま、頷いた。
まあ、妖怪が居る位だし、鬼が居ても可笑しくはないと思うけど。
「そう。・・・此方の世界で妖怪が暴れないように見守る、番人みたいなもの。・・・その為に、あの世からこっちに生み出された」
「・・・生み出された・・・。」
見守る・・・というそれが皆の言っていた妖怪の討伐だという事は何となく解る。
確かに妖怪の討伐が仕事、という事はキチンと前に話してもらった。
「ってか・・・何つーの・・・?転生?・・・取り敢えず、あっちの世界の記憶は抜いて、能力だけはこっちの肉体に移して、こっちに生まれる・・・みたいな・・・。・・・解る?」
「何となく、ぼんやりと」
本当に何となくしか解らないけど、言いたい事は何となく解る。
それを聞いて侑魔君は頷き、それから飲み物を口にした。
「充分。で、俺達の役割は世界を守る事。その為にはまず大前提として、戦って、妖怪の暴走を食い止めなきゃならない」
「・・・」
「でも、何百年かに一度は、世界のバランスが大きく崩れて、妖怪共が暴走しまくる時期がある」
「・・・今みたいに?」
この間カラオケに行く前後位から、現に私はかなりの数の妖怪に襲われている。
校内でも街中でも、暴走する人が増えている。
確実に。
何かが起こる前特有の不穏な気配を率いて。
「そう。・・・今が一番でかいんだけどな。・・・そして、その時の俺の・・・『猫鬼』としての役割を果たす時が、迫ってるって訳だ」
「ビョウキ?」
病気?
繰り返した私に苦笑して、侑魔君は適当な紙に漢字で書いてくれた。
「猫の鬼と書いて猫鬼。・・・そして、この世界においての猫の役割は、『贄』・・・というか『人柱』になって、その魂を持ってバランスを安定させる事」
「っ!?それって・・・っ」
目を見開いて、侑魔君を見つめる。
生贄、なんて。
信じられない、という私の視線を真っ向から受け止めて、侑魔君は無表情のまま、口を開いた。
「蘇り掛けた四神っていう・・・この世界を崩すかも知れない神達は代々、猫鬼が魂を持って封印しなきゃならない」
淡々と。
侑魔君の口から語られた言葉に、愕然とした。
「つまり、・・・お兄さんから言われたのは、『最悪の場合、贄になる覚悟をしておけ』って事」
「・・・っ、そん、な」
贄になる覚悟・・・それは、死ぬ覚悟をしておけ、という事じゃないのか。
そんな・・・!!