洒落になんねーっスわー。
阿呆な事を考えながらチラッと隣の席に視線を向けてみると、机の突っ伏したままでグロッキー状態になって人魂を飛ばしている侑魔君が居た。
・・・どうでも良いケド顔が青い。
今から死にますみたいな顔色してるんだけど、え、何、どうかしたの?
「侑魔君、顔色悪いけど大丈夫?・・・もしかして昨日ので怪我とか・・・!」
「けほ、けほ・・・っ。怪我って。あんな低級妖怪相手に怪我は負わんよ」
呆れたように言ってきた侑魔君の顔は、やはり真っ青。
・・・確かに怪我でこうはならないよね。
どっちかっつーと、この顔色は病系だ。
内側からダメージが来てる感じがする。
「じゃあどうしたの・・・?凄い体調悪そうだよ?」
言うと、侑魔君はのろのろと顔を起こして、口元を押さえた。
何か顔色が青も白も通り越して土気色に・・・、本格的に危ない感じがする。
「・・・・・・吐血しそうで」
「吐血!?」
「・・・・・・・まあ、いつもの事だから良いんだけどさ」
口元押さえて呟いた瞬間、侑魔君の手からタラーっと血が。
ってえええええええええええええええええええ、本当に吐血してる!?
コレ、明らかに何か学校で日常的に起こって良い現象じゃないよね!!
「侑魔、今日のお熱はいーくつ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「言わなきゃくすぐるよ」」
「・・・・・・・・・・・・・37.9」
お兄ちゃんの笑顔の問いかけに対しては冷や汗流しながら視線を逸らしていた侑魔君も、翔魔君と魅艶君が絡むとそうも行かなくなったらしい。
・・・この二人相手だと本気で確実に擽られるから、それが嫌なようです。
っていうか熱あるんか!!!
何で学校来たし。
「・・・・・・翔魔。頼んだ」
「あいよー」
お兄ちゃんが翔魔君にGOサインを出した瞬間、翔魔君ががたっと音を立てて立ち上がる。
それに反応した侑魔君が慌てて飛び退ろうとしたらしいけど、熱と吐血で体力が危ないためか、敢え無く失敗。
翔魔君にあっさり捕獲されました。
「うわっ、ちょっ!?」
(ってかお姫様抱っこ!!!!!!!!)
実際に見たの初めてだ・・・、と内心で感心する。
翔魔君力持ちなんだなー、とか思いつつ。
「・・・ええと、すみません。翔魔さん?俺を何処に連れて行くつもりで?」
「君が大好きな保健室だよ勿論」
「アイドントライク保健室ぅうう!!」
何故そこだけ英語。
っていうか侑魔君保健室嫌いなんだ・・・。
いつも体調悪そうな癖に。
「ほらほら暴れないのー。暴れたらこの格好のままで校内一周しちゃうよ?」
「勘弁してください後生なんで」
一部のお姉様方は喜ぶかもしれないけどね。
ヒクリ、と心底嫌そうな口元を引き攣らせて、侑魔君が頭を振る。
・・・まあ、そりゃ嫌だろうね。
「じゃあ僕のいう事聞きなさいな」
「・・・・・・・無念」
最終的に、笑顔で脅しつけた翔魔君に観念したらしい侑魔君。
・・・最初から結果は見えていたけどねなんて言ったら駄目だよね。うん。
侑魔君軽く凹みそうだし。
「・・・白亜、悪いけど次の時間終わったら侑魔君迎えに行ってくれないかな?」
教室の外に出て行った侑魔君と翔魔君を見ながら(勿論横抱き続行のまま)、お兄ちゃんが言ってきた台詞に溜息を吐く。
・・・どうでも良いケド侑魔君、クラス内に血の跡を残していかないで・・・。
「ん。解った。・・・っていうか侑魔君っていつもああなの?」
「「体調不良が標準装備の人だよ」」
私の問いかけに対して、お兄ちゃん、魅艶君からあっさりとした返事が返ってきました。
「・・・はあ」
よく今まで生きてたな・・・侑魔君。
私はふと教卓の方に視線を向けて、授業五分前なのにも関わらず早々に来てスタンバっている数学教師に視線を向け、溜息を吐いた。
☆☆☆
保健室のドアを軽く二回ノックして、溜息を吐く。
・・・あー、もう、数学なんて考えた奴誰だ・・・。
今から熱いお礼にソイツの頭上に細かく切ったティッシュペーパーを降らせてやりたい気分だよ。
「失礼しまーす」
取りあえず返事が返ってこないのを気にせず、ドアを開ける。
中には、白をベースにして統一された、一般的な保健室の光景が広がっていた。
中に入っていくものの、保健の先生が見えないという事は・・・職員室か何かに戻ってるって事かな?
幸いなことに、ベッドは一つしか塞がっていなかったため、侑魔君が何処に居るのかは直ぐに解った。
カーテンを開けて、眉間に皺を寄せて眠る侑魔君を見下ろす。
・・・居るよねー、寝る時だけ眉間に皺寄せて寝る人って。
侑魔君は正にそのタイプらしい。
「・・・侑魔君?大丈夫?」
声を掛けると、侑魔君の睫毛がフルフルとゆれて、静かに目が開いた。
いつもよりぼんやりとした、金色の双眸が見える。
「・・・・んう?」
「・・・・・・えーと、起きられる?」
「・・・いま、なんじげんめ」
「四時限目終わったトコ」
「・・・めしか・・・」
「う、うん・・・」
心なしかだるそうな声。
半分夢の中から抜け切れてない感じがする。
(ね、寝惚けてる!?)
侑魔君は今、見れば解る位、完膚なきまでに寝惚けてる。
「・・・ふぁあ・・・」
軽く欠伸をして伸びをする侑魔君の口元にあった吐血の跡も、すっかり拭われた後らしい。
綺麗に消えている。
とはいえ、吐血した事実は変わらない訳で。
しかも皆の対応から考えるに、コレって今に始まった事じゃないんだろうし。
「と、吐血は大丈夫だった?」
「ああ・・・」
「・・・」
ぼんやりとした視線が、私の方に再度向き直る。
それから、ニッコリと爽やかな笑顔を浮かべた。
「吐くだけ吐いたら楽になりました」
「駄目じゃんそれぇええええ!!!」
爽やかな笑顔で言って良い台詞じゃねえ!!
周りにキラキラしたもの浮いてるけど内容が恐ろしすぎる。
血を吐くだけ吐いたらまずいんじゃないのか、色んな意味で。
「っていうか、え、血大丈夫!?足りてる!?」
「いつも貧血気味だから大丈夫」
「ねえ、その台詞の後に大丈夫ってつけても説得力ないの解ってる?」
「?」
首を傾げるなよ。
絶対解ってないよ。
っていうか侑魔君絶対低血圧だろうな、今も意識がフワフワしてる感じだもん。
「病院とか、行かないの?」
「・・・I don't like Hospital」
「いやあの、好きとか嫌いとかの問題じゃなくて・・・っていうか英語苦手って言っておきながら活用してんじゃん!!」
寝起きの侑魔君はツッコミどころが満載なんだという事を学習した今日この頃。
―あとがき
作者は侑魔君を完全に人事として書いてるからこそ「何で学校来たし」の台詞が出た訳だけども。
当人として台詞を言わせて貰うと「家に居ると病院に連れて行かれるからだ!!!!!!!!」という感じ。
っていうか夫婦喧嘩五月蝿すぎて気もそぞろな為、文章がガタガタ。
誰かあの酔っ払い爺をどうにかしてくれ(切実