教室へ行くと、やはりというか何と言うか、結構早い時間な筈なのにバカレンのほとんどの面子が揃っていた。
 
・・・居ないのは、魅艶君とお兄ちゃんか。
 
結構色んな人から聞かれるけど、何でお兄ちゃんと一緒に登校しないのか?と聞かれますが・・・答えは簡単。
 
別に同じ家に住んでるからって一緒に登校する必要なくね?みたいな・・・暗黙の了解故です。
 
気分と時間が揃えばたまに一緒に来ると思うケドね。
 
「あ、優君、おはよう」
 
教室に入り、いつもの如く藍色の髪の隣に鮮やかなピンク色を見つけて、声を掛ける。
 
金色の目と、緑色の目が此方を見据える。
 
「んー?おーはよー」
 
私を見つけて、ホワンと挨拶してくれる優君に、私も微笑み返す。
 
「昨日は、送ってくれて有難う。あと、豆腐も。美味しかったよ」
 
しっかり麻婆豆腐にしていただきました。
 
いやあ、絶品だった。
 
「そう?それは良かった〜。また是非どうぞ」
 
「・・・つくづく商人だね、優君」
 
「自営業の家の息子だからね」
 
うーむ・・・油断ならない・・・。
 
何か、ホストの他にテレビショッングのお兄さんって将来もありかも知れない。
 
まあ、それは私が決めることじゃないけど。
 
「あはは・・・。あ、侑魔君もおはよう」
 
「ん。はよっす」
 
今まで黙り込んで小説を読んでいた侑魔君にも、遅ればせながら笑いかける。
 
いつの間にか本の方に向いていた金色の目が、再び私に向けられる。
 
「二人共、大概一緒に居るんだね・・・」
 
「?まあ、そうだね」
 
「・・・大概な」
 
仲良いなーとかほのぼのと生ぬるい目で二人の様子を見る。
 
「・・・・・・・」
 
不意に、優君からも視線が向けられていることに気付いて、首を傾げた。
 
・・・何か、私顔についてる?と思い、ぺたぺたと自分の顔とか触ってみるけど、特に何がついてる訳でもないし。
 
「?何?優君」
 
問いかけると、優君はにっこぉーっと笑って、私に手招きして見せた。
 
「ちょっと白亜ちゃん、腕貸して」
 
・・・腕?
 
・・・何故に?
 
よく解らないまま、取り敢えず差し出す。
 
「???はい」
 
「ちょっとごめんね」
 
言うなり、ガシッと腕を掴まれた
 
え、え、え、えええええ!?
 
「!?」
 
何、何で腕掴まれたの!?とプチパニックを起こす私を他所に、優君の表情はいたって真剣。
 
私は私で、対処の仕方に困り、されるがまま状態になっていた。
 
「・・・おおお、ぷにぷに・・・」
 
「へ!?」
 
「流石女の子っ、ぷにぷに加減が半端じゃない!!」
 
「え、それって・・・太ってると言いたいの・・・?」
 
すいません、私も女の子なんで、そんな台詞言われると凄く凹むんですけど。
 
っていうか泣きたくなるんですけど。
 
え、ダイエット必要ですか?コレ。
 
私の泣きそうな視線を受けて、優君は首を傾げ、それから横に振った。
 
「違うよー。そういう意味じゃなくて。ってかね、それで言うとこの子も凄いんだよホラ!」
 
うおっ!?
 
言うなり、侑魔君の腕を掴んで、私の方に突き出す。
 
小説読んで、完全に我関せずの態度だった侑魔君も、かなり驚いたらしい。
 
っていうか、何、触ってみろって事?
 
・・・んー・・・。
 
「・・・ちょっと失礼」
 
ぷにっとね。
 
ぷに。
 
ぷにぷにぷに。
 
「な、何、だよ・・・」
 
いかん。
 
侑魔君が完全に警戒心MAXの表情で見てきてる。
 
・・・どうしよう、私そういう趣味ない筈なのに。
 
怯えた子猫みたいな表情は意外にクる物がある。
 
っていうかちょい待ち。
 
何この感触。
 
おおおおお!!
 
ね!?
 
やばいっスよ先輩!!
 
この腕のぷにぷに感は女の子顔負けだよ!!!
 
っていうかこんな思考繰り広げてる時点で女の子ギリギリって感じだよね!!私!!!
 
「いやあ、女の子のぷにぷには癒しだよね・・・」
 
「何となく解る辺り、私もお兄ちゃんと似たような属性なのかもと今思いました・・・」
 
「っていうか、俺、女じゃないんだけど・・・」
 
「大丈夫。何とかなるさ侑君なら
 
しなくていいし!!っていうか何の話しだコレ!
 
え、侑魔君女の子計画?
 
真顔でそんな事言おうものなら引っ掛かれそうな勢いだから言わないようにしとくけどさ。
 
「っていうかね、バカレンの皆美形揃いだから、充分女の子でも通用するよね。モデルさんいけるよ」
 
爾君とかもいける。
 
あと、魅艶君なんか髪綺麗だから、和服美人な感じで・・・。
 
あははは☆私の脳内やっばいねー♪
 
強いて言うなら゛駄目だコイツ早く何とかしないと゛?
 
・・・多分どうにもならないだろうなーと本人がまず諦めてる件。
 
「あはは、僕は無理だろうけどね」
 
「大丈夫です。お姉様系でイケます」
 
・・・最近の女の子の考えてることは解らんぜよ
 
苦々しく言った侑魔君に、取り敢えず女の子は神秘の宝箱なんだヨ☆とか言ったらどんな顔するだろうかね。
 
                 ☆☆☆
 
「あ、そういえば白亜ちゃん」
 
「?何?」
 
移動教室にいざ行かん、としていた私を呼び止めた優君の声に、疑問符を浮かべて振り返る。
 
「今度、僕の家に遊びに来ない?」
 
「へ?」
 
・・・何か、今物凄い軽いノリでサラッと恐ろしいことを言われたような・・・。
 
・・・えーと。
 
「うちで作ってる豆腐気に入って貰えたなら、料理ごちそうするよ」
 
「・・・」
 
「あ、勿論作るのオカンだけど」
 
(あ、良かった・・・両親在宅)
 
あからさまにホッとした私の表情から何かを悟ったのか、優君は「ははは」と軽く笑った。
 
「あはは、何も疚しい事しないから大丈夫だよー。バカレンの皆を呼ぶのと同じ感覚だからさ」
 
(それも複雑・・・)
 
女の子として意識されてないのもそれはそれで凹む、難しいお年頃な訳で。
 
・・・かといってもしもの事ってあるしなー・・・。
 
・・・いかん。
 
頭の中にピン○・レディーの曲のワンフレーズが・・・。
 
「んー・・・」
 
男は狼なのーよーに合わせて思考を繰り広げる。
 
さーて・・・どうしますか。
 
 
 
▽【侑魔君もセットなら】→@ルートへ
▽【うん。いいよ】→Aルートへ
 
 
 
白亜さん会議で決まったことを口頭で返すと、優君はニコッと笑って返して来た。
 
・・・良かった。
 
機嫌は損ねなかったらしい。
 
「了解ー。それじゃあ今度、空いた時に声掛けるからね。楽しみにしてて」
 
「解った。楽しみにしてるよ」
 
ヒラヒラと手を振る優君に、私もヘラッと笑みを返した。