休日の午前中と言えば、学生のパラダイスのような時間だ。
家でゴロゴロしたり、TV見たり、雑誌読んだり、出かけたり、友達と遊んだり。
・・・今の私の状況は、世間一般の女子と多少ずれてるといえども、一応最後から数えて二つ目と、最後の項目に当て嵌まるんだろうなー・・・。
・・・傍から見たらかなり凄い状況だろうけど。
男子八人と一緒にファミレスでご飯食べてる女子高校生って・・・。
「といーう訳で!!!明日は暴走の回数も人数も増えている妖怪対策の為に、ファミレスで会議すっぞ!!」
私のループ気味な思考をぶった切って、翔魔君が元気に大きく声を上げる。
・・・一応公共の場所だから声の大きさ考えた方が良いんじゃないかと思うんだけど・・・。
うわーい周囲の人の視線が痛いよー。
「え、でも聞かれちゃまずくね?一般の奴大量に居るんだぜ?」
時雨君の意見も最もだ。
休日の午前中のファミレスで、妖怪がどうとか言ってたら秘密漏れる上にメッチャ痛い人扱いされるんじゃないでせうか。
っていうかもうさ、目立ってるから。
物凄い場所を移動したい気分なんだけど。
何かバカレンの中にも明らかに気にしてる人と気にしてない人で分かれてるし。
「別に僕らそんなに目立たないし、大丈夫じゃね?」
(目立ってるから、物凄く)
翔魔君の台詞に、心の中でだけ反論しておく。
・・・いや、言っても大丈夫で押し切られるであろう事は何となくこの短い期間で理解しましたとも。
「・・・」
同じく、先刻反論した時雨君も黙り込んでいた。
目は言いたい事を沢山物語っていたけど。
「グレさん、言いたい事があるならなるべく言っておいた方が良いと思うよ」
「何デモナーイヨッ」
「嘘つけ、目が語っているぞ?私ハ隠シ事苦手デェエエスとか何とか」
「何処の似非外国人だよ。っていうかお前が青埜さんの何を知ってるというんだねワトソン君」
「青埜さんの体の事なら大抵は解るよっていったらどうする?」
「先生、此処に変質者が居ます!」
「え、それ青埜さんの事だよね?」
「自首するとは見上げた根性だな」
「ワーオ」
えーと・・・言いたい事云々は湊君、目が語ってる云々と青埜さんの事云々と変質者発言は魅艶君、最後の見上げた根性〜は侑魔君の発言です。
此処まで人数集まられると最早誰の発言がどれなのかも認識するのが難しい。
というか、文面にまとめるのが面倒臭・・・おーっと本音が。
「いいか、手前等会議の内容に頭遅れるんじゃねぇぞぉ?解っ「うぇっへーい!!!」何だよ行き成り吃驚させんなよー!!!」
「咳だよぉぉ生理現象だよー!!」
・・・言うまでもなく魅艶君と翔魔君の遣り取りですねはい解ります。
この二人は会話で個性主張しすぎだろぃ。
☆☆☆
「まあぶっちゃけ、会議をまとめると・・・」
『・・・』
今のが会議か、と全員の沈黙が物語ってるけど、翔魔君は敢えて無視した模様。
運ばれてきた料理を口を頬張り、咀嚼して飲み込んでから、再び全員の方に視線を向けた。
「取り敢えずうちの兄貴が対策練ってるから、近々状況把握して報告するから待っとけ、みたいな事を言ってたよって話し」
もうコレ会議じゃないよね。
ただの結論の発表だよね。
「面倒く臭くなったからって速攻で会議の結果だけいうんかい」
案の定侑魔君に突っ込まれるし。
「だってぇ・・・考えたら僕ら今までとやる事変わんなくない?」
「まあな」
「じゃあ良いじゃん!」
結局その一言以降、話は雑談の方向に向かって走って行った。
此処から翔魔&皐月ルート
「んー・・・」
私は目の前に並ぶ料理を前に、唸る。
(どうしよう・・・これ以上は流石に無理かも・・・)
お腹がきつくなってきたし・・・と溜息を吐く。
っていうか体重的な意味でも、お腹の容量的な意味でももう限界に近い。
(調子に乗って頼みすぎたかも知れない・・・)
かも知れない所か、確実に頼みすぎだ・・・。
皆美味しそうに見えたとは言え、判断を誤ったかな・・・。
「どうしたー?」
横からひょいっと私の方を覗き込んできたお兄ちゃんに、溜息を吐いてみせる。
・・・っていうかお兄ちゃん食べるの早いよ!!
私と同じ位の量頼んでおいてもう完食かよ!!!
「・・・実は、頼みすぎちゃってさー・・・」
「?・・・あー、もう入らないって事?」
「うん・・・」
こういう時は直ぐに察してくれるお兄ちゃんを、実は私は頼りにして居る。
もう限界なんだ!!お腹に入らないんだ!!太っちゃうんだ!!!と目で必死に訴える。
対するお兄ちゃんは、私のその視線に気付いているのか居ないのか、暫く私の頼んだ料理を眺めてから、私に視線を戻した。
「・・・なら、俺が食べようか?」
「有難う!お兄ちゃん!大好き!」
間髪入れずにお礼を言った後、アフターケアも忘れない。
計画どおりとか黒い事は考えていないのでご心配なく。
「あ、僕もそれ欲しいよ。皐月だけずるい」
お兄ちゃんの隣で魅艶君達と駄弁っていた翔魔君も、会話に入ってくる。
私としては、誰かが全部食べてくれればそれでいいので、気にしない。
「じゃあ、翔魔君も。えーと・・・じゃ、お兄ちゃん、はい」
「あーん・・・」
スプーンに掬って、お兄ちゃんの口に運ぶ。
それからもう一度掬って、今度は翔魔君の方に向き直る。
「はいどうぞ。じゃあ、次翔魔君」
「あーん」
「はい」
何と言うか・・・意外とノリが良くて吃驚したよ、翔魔君。
・・・ついお兄ちゃんと同じようにやっちゃたけど、男の人にコレやっていいのか、と一瞬葛藤したからね、私。
家族にやるのと友達にやるのじゃ訳が違うし。
・・・でも、嫌がられてないみたいで良かった・・・。
「・・・うわー・・・何つーか・・・餌付けの場面見てる気分なんだけど」
「奇遇だな。今同じ事思ったよ・・・」
何か湊君と侑魔君が失礼なことを言ってるような気がするんだけど、気のせいかな。
「美味しいね!コレ!!」
「な!っていうか良いの?こんなに貰っちゃって!」
・・・本人達は気にしてないみたいだから良いケドね、と苦笑する。
二人の言葉に、私はニコッと笑って返した。
全然構いません。
寧ろ全部消費してやって下さい。
「気にしないで!私あんまり大量に食べられないから。食事が無駄にならずに済むし」
ならば何でそんなに頼んだのかと言えば、誘惑に負けました、としか言えない哀しい女の習性。
女の子は可愛いものと美味しいものに弱いんだよ!!
「お前はもうちょっと計画性を持つべきだよ」
「何なら常に僕が隣に居て、君の残飯処理してあげようか?」
「残飯処理って・・・言葉選ぼうよ翔魔君」
何か悪いイメージが・・・。
「言葉と一緒に場所も選べよ」
「っていうかファミレス内でよくもあそこまで出来るな・・・」
「本人気付いてないからだよね、あれは」
時雨君、侑魔君、優君の三人が何か言ってるようですが、聞こえに無かった事にしておきます。
・・・自分でも゛次からは場所考えよう゛という教訓を学びつつ。
あとがき
取りあえず、皐月君はアレです。
白亜嬢にとっては大事な家族なんです、という話し。
だから家でも「はい、お兄ちゃんあーん」とか普通にやってる感じ。
家でいつもやってる事を外でやっちゃうとたまに恥ずかしくなりません?(汗