(風強いのかなー・・・)
今日は台風かしら―・・・なんてぼやけた思考のままで、窓の外へ視線を向ける。
・・・駄目だ、どうも気分が上昇しない。
凹みっ放し。
「あれ?白亜ちゃん?」
不意にドアの方から掛けられた声に、視線を向ける。
・・・湊君、いつの間に来たんだろう。
「湊君、どうしたの?」
問いかけると、湊君は自分の席に歩み寄り、軽く帰り支度を整え始めた。
「いや・・・僕は委員会から帰ってきた所なんだけど・・・今帰る所?」
一瞬だけ手を止めて、此方に視線が向けられる。
どうでも良いケド一瞬チラリと見えた鞄の中がカオスだったんだけど・・・!!
見た目に寄らず・・・意外と大雑把な人なのかな。
「まあね・・・。ちょっと考え事してたらいつの間にか一人に・・・」
苦笑して返すと、湊君はふいっと鞄の方に視線を戻した。
一度携帯を開いて、一度小さく「またかよ・・・しつこいな」とかぼやいた。
・・・迷惑なメールでも来た系ですか?
それから、メールを返信しているのか、何かを打ち込みながら「そっかー・・・」と返答してくる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙が、凄く重い。
携帯を閉じて、湊君は一瞬私に何を言おうか迷ったのか、目が泳いだ。
「か、帰るけど、途中まで一緒に帰る?」
「あ、うん」
何かぎくしゃくするなー・・・返答に。
向こうも色々とやり辛いものを感じているのか、何となく雰囲気が居心地悪そうだ。
「白亜ちゃんって皐月君の家に一緒に住んでるんだよね?」
どちらからともなく一緒に教室を出て廊下で並びながら歩く。
「うん。お兄ちゃんにお世話になってるんだ」
「そっか、大変だねー・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
また会話が途切れた。
・・・うーん・・・話題話題・・・。
「湊君って、趣味とかある?」
オーソドックスな質問だけど、その分答えは返しやすいんじゃないかな、と思いながら質問すると、湊君は「んー・・・」と考え込む。
・・・あれ、ひょっとして無趣味な人?
それだと凄く困るんだけど・・・。
「・・・パソコンをいじるのとか好きかな。あと、ゲーム?」
良かった、無趣味ではないみたい。
内心でほっとしながら、私は「へえ」と相槌を打つ。
「・・・パソコンはわかるけど、ゲームは意外かも知れない」
「そう?」
「うん。何か凄い真面目そうだしさ・・・」
そう言うと、苦笑染みた笑みが返って来る。
「そんな事ないよ〜・・・。・・・授業中とかよく寝てるし・・・」
「えぇぇ!?」
「何でそんなに驚くかな・・・」
だってかなり意外なんだもの。
・・・寧ろ授業に集中する余り周りの騒音とか居眠りとかに嫌悪感を感じるタイプの人かと思ってました。
眼光鋭く授業中に殺気放つ感じの人だとばっかり・・・。
「え、誰も起こしてくれないの?」
「いや、寧ろ僕起こされると不機嫌になるから・・・そのままにしておいてくれた方が助かるんだ・・・」
えええ・・・。
・・・それって自分が困らない?
「でも、先生に注意とかされたりしない?」
「たまにされるかな」
「・・・それでも寝るの?」
「だって退屈なんだも〜ん・・・」
「・・・・・・そ、そっか・・・」
何か・・・意外と大雑把な人なのかも知れない、この人。
(・・・人って見た目じゃないんだな・・・)
なんてぼんやりと考えながら、私達は道が分かれる所までそんな調子で会話を続けていた。