キーンコーンカーンコーン・・・
 
転校初日の昼休みの時間。
 
私は早速友達になった(らしい)八人と一緒にご飯を食べることになった。
 
どうやらバカレンジャーと言うグループのメンバーらしく、皆それなりに仲も良いらしい。
 
その中には勿論、お兄ちゃんこと橙 皐月と蒼紺 侑魔君も居る。
 
昼食の直前である今、何故か皆は手を胸の前で掲げて、無言で私を見ている。
 
・・・真似をしろって事?
 
何となく察して、皆と同じように胸の前で手を掲げると、どうやらこのグループのリーダーらしい紅暗 翔魔君がよし、と小さく頷いてから、口を開いた。
 
「んじゃま、いきまーす」
 
そう前置きしてから、「せーのっ」と呟き、皆で手を合わせた。
 
私もそれに倣う。
 
『いただきます』
 
皆の声が揃って告げた。
 
それが合図だったのか、皆それぞれの弁当を箸で突いて食べ始める。
 
・・・何か、こういうのいいなー・・・なんて思う。
 
「皐月、悪い・・・コレ喰ってくれ」
 
「んー?いいよー。じゃあ我もコレをあげよう」
 
「んー」
 
とか言いながら、弁当のおかずを交換している侑魔君とお兄ちゃん。
 
・・・侑魔君、小食なんだろうな・・・。
 
昨日も一緒にご飯食べた時も、お兄ちゃんに半分食べて貰ってたし。
 
その様子を眺めながら、私は翔魔君達とも会話をしていた。
 
・・・お兄ちゃん達だけじゃなくて、ちゃんと他の人とも話さないと仲良くなれないしね。
 
取り敢えず今は、私がどうしてこの学校に転校することになったのか、どうしてお兄ちゃんと住むことになったのかの話し。
 
「へえ、じゃあ親が事故っちゃって、今入院中なんだ・・・」
 
私の話しに相槌を打ちながら、翔魔君はどうやらコンビニから買ってきたらしいサラダを頬張っている。
 
・・・まだあとオニギリが二つ待ち構えてるけど。
 
「そうそう、しかも昏睡状態
 
私も弁当を頬張りながら、軽いノリで説明する。
 
お母さんもお父さんも、車の運転中に事故にあって、今は二人仲良く病院に居る。
 
だから日頃から余所見運転は駄目だって言ったのに・・・。
 
サラッと凄い事言うね・・・
 
そうかな?と首を傾げると、そうだよ・・・と黄将 湊君に複雑そうな表情で頷かれた。
 
って言われても・・・うちって小さい頃からこういうの結構多かったから、最早慣れちゃったんだよね・・・。
 
「しかも白亜、お前も犬に追いかけられてスケボーで崖から転落してプチ入院してたろ?大丈夫?」
 
取り敢えずお兄ちゃん、口の中の物を飲み込んでから喋ろうね
 
「ああ、全然平気。骨も戻ったし、跡も残ってないよ」
 
お医者さんに何故か呆れられたものの、直ぐに怪我も治ったし。
 
因みに私はの真正面では、青埜 時雨君が物凄い顔をしてこっちを見ている。
 
「・・・笑顔で言って良い台詞じゃねー・・・」
 
・・・あの、そんな異常なもの見る目つきで見られると非常に傷つくんですが。
 
「っていうかそういえば此処の学校ってかなり珍しい校風なんだね」
 
慌てて話しを逸らすと、目があった秦緑 爾君が首を傾げた。
 
「?そうかな。・・・普通じゃない?」
 
「私服登校の高校って初めてみたよ、私」
 
少なくとも、私の知ってる高校は漏れなく全部制服だったし。
 
大学ならともかく、私服OKな高校って珍しいと思う。
 
「いやいや、割と探せばあるもんよー」
 
「探したことあるのか?魅艶」
 
ない
 
じゃあ言うなよ!!
 
ご尤もですね、翔魔君。
 
翔魔君のツッコミに対して、黒密 魅艶君はヘッと軽く笑って見せた。
 
「僕がそんな面倒臭いことすると思う?」
 
地球が100回太陽に飲まれてもありえない
 
「あっはっはー。へーい!!!
 
ベッチーン!!!
 
※今の音は、魅艶君が翔魔君の頭を思いっきり叩いた音です。
 
痛―い!!!もっと優しくしてくれよハニー」
 
おーっとごめんよダーリン
 
「奥さん、旦那・・・飯の最中の喧嘩は感心しませんぜぃ」
 
何故か突如夫婦関係となった魅艶君と翔魔君の間に、妙な口調の侑魔君が乱入してきた。
 
・・・何ていうか、よくこんなにギャグちっくな会話が出来るな・・・この人達。
 
多分コレを素でやってるというから凄い。
 
「駄目だよダニー、親にそういう口の聞き方しちゃ」
 
何か侑魔君の名前がいつの間にかダニーになってる件。
 
え、何、侑魔君はこの二人の子供か何か設定な訳?
 
「・・・これ、どんな遣り取りですか」
 
思わず横に居た時雨君に聞くと、時雨君はゆっくりとこっちに視線を向けた。
 
「気にしたら爆発するぞ。青埜さんが
 
「「「お前がかよ!!」」」
 
湊君、お兄ちゃん、侑魔君からの盛大なツッコミが来ました。
 
・・・一番謎なのはこの人かも知れない。
 
                    ☆☆☆
 
「はー・・・転校初日からかなりハイテンションな人達と友達になっちゃったなー・・・」
 
ぼやきながら、放課後の廊下を歩く。
 
まあ、友達が出来て何よりではあるけどさ。
 
「・・・取り敢えず、これからも何とかやって行けそうで良かった・・・」
 
ホッと一人で溜息を吐く私の耳に、何故か悲鳴のような声と、物のぶっ壊れる音みたいなのが届いたのは、丁度その時。
 
「・・・?何か、凄い騒ぎが起きてない・・・?」
 
結構遠いみたいだけど。
 
・・・何の騒ぎなんだろう・・・。
 
(・・・どうしよっかなー・・・)
 
 
 
▽【騒ぎの方へ】
▽【此処に留まる】
▽【教室へ避難】
▽【気にせずブラブラ】