取り敢えず、壁際で話している四人に話しかけてみることにした。
・・・正直かなり近寄り難い雰囲気だけど、この人達に話しかけられたらクラスの大半の人に話しかけられる気がするし。
取り敢えず、最初は大きな壁から取り除こう戦法。
「そこで<ピー>が<ピー>で<ピー>して!」
「そういえばドナルドがそこで」
「ワオワオワオ!!そりゃねーぜ!!」
「ちょっと此処学校!!」
うわ、先刻の自分の宣言一瞬取り消したくなった。
この人達相手に話すのは実に大変そう。
寧ろ話題についていけない可能性大。
(いやいや、こんな所でめげてどうする!!)
一瞬めげかけた自分を何とか一喝して、私は顔を上げた。
「あ、あの」
「「「「ん?」」」」
声を掛けると、四人の会話がストップして、全員の視線が集中する。
うわ、話し辛そう・・・。
「えと、先刻紹介しましたけど、色無 白亜です。宜しくね」
ニッコリと、精一杯の営業スマイルを浮かべて言う。
四人の中で、そんな私に一番早く対処をしてくれたのは黒い髪の人だった。
「ああ、宜しくね、色無さん」
何か若干威圧感を感じるけど、・・・悪い人ではないのかな。
「宜しく・・・えーと・・・」
「ああはいはい、こっちも紹介しなきゃね。僕は黒密 魅艶って言います」
名前を知らないことに気付いたのか、魅艶君はへらへらーとした笑みを浮かべて私に挨拶をしてきてくれた。
物腰は柔らかいのに威圧感が半端ないです!!!!
「じゃあ次は僕か。僕は紅暗 翔魔だよ。宜しく」
黒髪の人を押しのけてニコニコと挨拶してきたのはチャラめの赤髪の人。
翔魔君に、軽くへこりと頭を下げると、ニッコリと笑顔が返ってきた。
・・・なんでだろ、この二人・・・凄い威圧感があるんですけど。
「・・・」
次に二人から視線を向けられた青髪の人は、沈黙してフイッと視線を逸らした。
・・・あれ!?私第一印象で嫌われたっぽい!?
「グレさんテンポを乱すなよ」
翔魔君に促されて、青い人は無表情のままで私に視線を戻した。
「・・・・・・・・・・青埜 時雨です」
凄い沈黙あったんだけど。
え、私何か気に障ることしましたか?
「黄将 湊です」
こっちはそれに比べて愛想良くしてくれようとしてるのは解るんだけど・・・心なしか棒読みっぽい・・・。
人見知りする人なのかな・・・。
「ええとね、一応僕らとあそこに居る紺色の髪とピンクの人と、橙の髪の人と緑の髪の人は同じグループの面子なんだけど」
翔魔君がニカニカしながら、先刻私が話しかけようとしていた二組の人達を指さした。
「ああ、お兄ちゃんと侑魔君・・・?」
ピンクの人と緑の人は面識ないけど、取り敢えず二人は解る。
何せ一人は従兄弟だし、一人は昨日衝撃的な出会い方をしているし。
「お兄ちゃん?」
「侑魔君と知り合い?」
魅艶君と湊君から質問が来て、その勢いに押されつつもコクンと頷く。
「えーと・・・お兄ちゃんの家に行った時に・・・」
「お兄ちゃんって、皐月?」
「あ、私従姉妹なんで・・・そう呼んでるんだけど」
そう答えると、翔魔君の表情が固まった。
それから、変な沈黙の後でギギギ・・・と機械みたいな感じでお兄ちゃん達の方を向いた。
「皐月ぃぃぃいいいい!!」
「ほうおあ!?何!?」
突如怒鳴った翔魔君に、雑談していたらしいお兄ちゃんの肩がビクッと震えた。
流石お兄ちゃん。
いいリアクションするなー。
感心する私を他所に、お兄ちゃんの元へ瞬時に走り寄った翔魔君は、お兄ちゃんにつかみかかった。
「手前何同い年の女の子に『お兄ちゃん(はあと)』なんて呼ばせてるんだよ!?」
「何の話し!?」
「惚けんなこの犯罪者がぁああああ!!」
わあー・・・お兄ちゃんが凄い状況になってるー。
・・・やっぱ私の所為ですよね、コレ。
「・・・こんなノリのグループで良ければ、クラスに馴染むまでの間でもどうぞ」
ヘラーっと笑って言う魅艶君だけど・・・あれ、私ひょっとして今勧誘されてる?
転校生で浮いている私を、一応気を遣ってくれてるのかな・・・。
「・・・は、はあ・・・」
呆けて頷くと、それを目に留めたらしい湊君が苦笑を浮かべた。
「ごめんね、毎日あんな調子だから、あの人達」
「へいへい、何自分はさり気なく除外してんだよ」
「えー?何のことー?」
・・・何か知らない内に魅艶君と湊君の言い合いが始まってしまった。
取り敢えず私と時雨君は、被害を受けない地点で二組のバトルが収まるのを待つ事にした。